10/16/2007

ロンドンの日記その2—ロンドンの住宅建築

「なんとなく、こういうことを書くことを期待されている気がする…」ということで(そうでもない?)様式の話をば。でも、正直、細かいことはよくわからないんですがね…。

「ヴィクトリアン様式」とか「チューダー様式」とか、そういうやつです。お暇な方(建築学科以外)は話のネタにでもどうぞ。

◆◆◆

ロンドンの街並は、「日本人が思い浮かべる外国の街並」にかなり近いものがあります。

それは、明治期に入ってきた西洋建築の多くがイギリス由来だったからであって、当たり前といえば当たり前なんですが…。

◆◆◆

ロンドンの街にある建物は、だいたい18〜20世紀の間のものだそうです。新しそう、とか、古そう、とか、なんとなくわかりますが、古いといっても17世紀以前のは普通、ない。

特に、19世紀から20世紀のはじめにかけては、さまざまな過去の様式が復古しました。だから、例えば、クイーン・アン様式といっても、アン女王時代(1707-1714年)に建てられたというわけではなくて、そのころの様式が19世紀にリバイバルして建てられたものだったりするので、ちょっと、ややこしいのです。


<ヴィクトリアン様式>

これは、ヴィクトリアン様式といわれる様式のテラスハウスです↓ヴィクトリア女王の時代は、1837-1901年。19世紀の建物です。

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晴れていると、煉瓦の赤が空の青に映えてそれはそれは美しい。元気の出るような街並です。

カドカン・スクウェア(スクウェアとは方形の広場のこと)のあたりには、有名な建築家であるノーマン・ショウが手がけた住宅があると聞いていってみたのですが、ぶっちゃけ、どれなんだかわからない;^_^A
一面、赤煉瓦。

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ノーマン・ショウが手がけたもので、もっとわかりやすいのは、旧スコットランドヤード=いまの国会議員宿舎で、ウェストミンスター橋の脇に建っているものだそうです。今回はみそびれたのですが、今度いったらぜひみたいもののうちのひとつです。

後期のヴィクトリアン様式のなかには、赤い煉瓦に白い石をまぜてシマシマにしたり、頭に塔を持つようなものもあります。(上述のスコットランドヤードもしかり。)こういうのを、特に、クイーン・アン様式と言ったりします。上でいったように、ややこしいのですが、アン女王時代の建築風、ということ(実際はそうでもなくてもっと自由なものらしいですが)。下は、セント・ジョンズ・ウッドのあたりの住宅です。

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クイーン・アン様式といえば、明治のイギリス派建築家・辰野金吾もよく使った様式です(その独特の様式は「辰野式」といわれたそうです。)
東京駅もそうした建築のうちの一つです。

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ところで、ロンドンにも、ヴィクトリアン様式の駅ーそれも超大作ーがあります。
史上最多作の建築家・G.G.スコット設計、セントパンクラス駅。

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この豪華さ。どなたかのお城だったのですか?という感じですが、

これは、ちゃんと駅として当初から建てられた建物で、クイーン・アン様式が台頭する前、1877年に完成したものです。はじめはホテルとしてもつかわれていたそう。

古く見えるのは、わざと古い様式をつかったからです。

「十四世紀ゴシックによる折衷様式と言われるが、実際には中世にはこれ程の大規模な世俗建築はないのだから、様式が一種独特の創作物となるのも仕方のないことであった。つまりは、十九世紀のヴィクトリアン・ゴシック様式なのである。」(鈴木博之「ジェントルマンの文化」)

特に、同じ本の、ここのくだりが大好きです。

「彼(スコット)自身、セント・パンクラス駅についてこう語っている。
『これは、ロンドンで一番奇麗な建物だと私に言う人が多い。私としては確かにこれは駅としてはすこし立派すぎるようにも思う。』
スコットの得意思うべしである。」

最後、これはカドカン・スクウェアにあるテラスハウスの一つ。

一つだけやたら凝ったつくりをしていて、気になってしかたがなかったのですが、由来はよくわからず。万が一、知っている方がいたら教えていただきたいものです。

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<ジョージアン様式>

煉瓦造りのテラスハウスでも、赤煉瓦ではなくて、ちょっと黄土色っぽい煉瓦や、黒っぽい煉瓦があります。これはヴィクトリアン女王より前、ジョージ1世-4世(1714-1830年)の時代のものであることが多く、ジョージアン様式といわれます。

この煉瓦は焼く温度が赤煉瓦より低い煉瓦です。

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リージェントストリートの終わり、セント・ジェームズ・パークのほとりに「カールトン・テラス・ハウス」という住居があります。

設計は、リージェントストリートの設計者、ジョン・ナッシュ。まるでひとつの大建築のようですが、いくつかの住居がよせあつまって、一つの集合体となっています。ちなみに、このドリス式柱は鉄骨だとか…。

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これも、ジョージアンの建築です。「どこが?」って感じですが、スタッコ(漆喰)を一枚はげば、黄色い煉瓦がおでまし、ということ。


<閑話休題>

ところで、煉瓦の積み方で、イギリス積みとフランス(フレミッシュ)積み(あといちおうオランダ積みも)というのがあり、建築学科にきてから、かなり最初の方に覚えさせられました。

これ、イギリス積みです。
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フランス(フレミッシュ)積みです。
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で、イギリスで煉瓦建築を見た私は、「あ、そうだ、これが本場のイギリス積みのはず!」と思って、その場で適当な煉瓦建築物をぱちり。

そして、家に帰ってみてみたら。

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あれ???

フランス(フレミッシュ)積みじゃん…。

っていう。

その場で気づかなかったのはどうかと思いますがね。

<チューダー様式>

いわゆるチューダー様式というのは、ハーフティンバーという木造建築で、日本人にとってはけっこうなじみのあるものです。

ただし、これもクイーン・アン様式と同じく、ロンドンにあるのはチューダー朝時代(15〜16世紀)のものではなくって、古そうでも19世紀〜20世紀初頭にかけてリバイバルしたものがほとんど。

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ね、こういう建物、日本にもあるでしょう?

三井ホームなんかではその名も「チューダー」という家を商品として扱っていたりします。なんで日本でチューダー様式を建てなきゃいけないんだろう…とちょっと悲しくなるところでもあります。

これが、外国っぽく見えるのは、日本よりも木材の感覚がせまかったり、斜めの部材が入っていることに起因します。斜め材がカーブしてるのは、私は、ロンドンに行ってはじめて見ましたが。

「リバティ・プリント」とかで有名なリバティ百貨店は、チューダー様式の立派な建物です。

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<テラスハウス>

と、そういえば、「ヴィクトリアン様式のテラスハウス」とか書いていて、「テラスハウスとは何ぞや」と思った人もいるかもしれませんが

テラスハウスとは、接道型(玄関あけたらすぐ道ってこと)の都市住宅のタイプで、隣の家との隙間をほとんどあけずに並んだ住宅のことです。

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でも、ポイントは入り口にあって。

すべてテラスハウスは、道から半階分だけ階段で上がるようになっています。
そして、よく見ると、道から半階分だけ下がる階段もあるのです。

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うまいこと、主玄関と勝手口のつかいわけをしているわけです。

そして、建物は道に面しているけれど、庭がないわけではなくて、庭は建物の裏にあります。外からは見えない、完全にプライベートな庭なのです。

テラスハウスたちは、白いスタッコの部分もあまり汚れがみられないのですが、時々、ペンキを塗り直したり、修理している人をみかけました。
ウワサに違わず、ほんとうにきちんとお手入れしているんだなあと感心。

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<ブルー・プラック>

ロンドンの見所と言えば、赤煉瓦、赤いバス、赤い公衆電話…、と赤ばっかりのイメージですが、

では、ロンドンの青いみどころ、といえば?

もしかしたらいろいろあるかもしれませんが、ひとつはブルー・プラックです。

これはロンドンの至る所に貼付けられた円盤型のプレートで、「(すでに亡くなった)著名人が昔すんでいた家」をあらわすものです。

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ブルー・プラックはかなりの数があって、専用のガイドブックが出ているほどらしいです。

正直外国人の身からは、さっぱりわからない人ばかりですが、それでも見つけたらちょっと嬉しいし、それがもし知っている人だったらなおさらでしょう。

「ああ、ここが」と思うだろうし、特別な思いを抱くと思います。これは、家を長く持たせる国民意識をたかめるのに、相当いい方策なんじゃないかと思ったり。

ちなみに、これは、かのシャーロック・ホームズのブルー・プラック。ベーカーストリート221B。
ジョージアン・ハウスにすんでたみたいですね。

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10/09/2007

ロンドンの日記その1ーカリアテッドまつりー

五十嵐太郎が「現代建築に関する16章」(講談社現代新書)の中で、身体と建築の話を書いていました。

特に、柱を身体と結びつける視点として、もっとも直接的に「カリアテッド」をとりあげていました。
「カリアテッド」は、女性の身体がそのまま柱になったもので、アテネのエレクティオンという神殿のものがオリジナルです。

「ウィトルウィウスの伝えるところによれば、ペルシア戦争のときにギリシアを裏切ったカリュアの街に対する見せしめというか侮辱として、そこの女性の身体を柱にしたという話になっています。」(五十嵐太郎)

ところで、18CイギリスのGreek Revival(ギリシャを見直す運動)の先駆けとして、ジェームズ・スチュアートとニコラス・レヴェットの実測図面集「アテネの古代遺跡」(1762年)がありますが

大英博物館にこの本、かざってありました。しかも、開いてるページがまさに、エレクティオン。

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イギリス人の中では「ギリシャっぽい」=「カリアテッド」なのか、ロンドンでは、商業施設などに、このエレクティオンのカリアテッドの「もどき」がけっこういたりしました。いまある写真は二つだけですが。

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二つ目のマッチョなカリアテッドなんか、なかなかいい味だしてます。こういうのが見つかると、ちょっとウキウキしてしまう。

ちょっと前には日本にもあったのかもしれないですが、東京ではあまりみかけたことがないです。「サザエさん」のオープニングとか、見ようによってはカリアテッドですけどもw

「ロンドンっ子はカリアテッドが好き」説はかなり濃厚で、

有名なところではロンドン郊外の近代建築である「ハイポイントI」(テクトン設計)の入り口にもカリアテッドがいるし、

鈴木先生の著書によれば、ロンドンにかつてあったユーストン駅舎はギリシア・ドリス式の神殿みたいなつくりだったため、その向かいに建つセント・パンクラスの教区教会堂はエレクティオンになぞらえてカリアテッドをもっているとか。(「ジェントルマンの文化ー建築からみた英国」(日本経済新聞社)より)

「ザ・粋なはからい」ですね。

残念なことにユーストン駅舎は今は建て替えられて味もそっけもないものになっているそうで、「ロンドンの駅が話題になると、このユーストン駅の悪口をいうのが今では知識人の証明になっているようなところがある。」(鈴木博之)

このテの話にすっごいロンドンぽさを感じてしまうのは、偏見でしょうかね。

◆◆◆

カリアテッドは直接的な人柱ですが、前述の、五十嵐さんの本には、古典の5種類の柱(オーダー)は人になぞらえられるという話がかいてありました。

「ドリス柱は男、イオニア柱は女」、そしてコリント柱も女、だそうです。そんなことはすっかり忘れていたのですが、

ロンドン郊外のカントリー・ヴィラであるチズウィックハウスを訪ねたときに、たまたま「少女のコリント柱」をみつけました。

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コリント柱はアカンサスの葉のもようを持つ柱ですが、上の室内装飾では、少女の頭の上にのったバスケットにアカンサスの葉があふれています。

普通のコリント柱はこういう感じの柱です。

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コリント柱の由来(ヴィトルヴィウスの「建築十書」にかかれているらしいです)

コリントスのある少女が病死し埋葬された際その乳母が、故人の遺品を籠に入れ、上にタイルをかぶせて墓のそばに供えた。
春になって、アカンサスがかごの外側を取り囲みタイルにあたって折れ曲がっている様子をたまたま見かけたカリマコス(紀元前5世紀ギリシアの彫刻家)は、その新鮮な美しさに感動して、それをデザイン化した新しい柱頭様式を作り上げたという。
☆☆☆

この由来をそのまま彫刻にしたんだそうな。(チズウィックハウスに置いてあった解説書にかいてありました。)

チズウィックハウスをつくった第三代バーリントン卿リチャード・ボイル(理科ででてくるボイル・シャルルの法則のボイルの孫らしい)は非常に博学で、建築に熱心な人だったようなので、本から得た知識をそのまま取り入れた趣向をこらしたんでしょう。

これも、ロンドンの知識人のあそびなんでしょうね。

余談ですが、アカンサスっていわれても、どんなのかピンとこないと思うんですが、日本語では「葉アザミ」で、湯島の岩崎邸(重要文化財)に生えているのをたまたま見つけました。こういう植物らしいです。

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◆◆◆

余談ですが、生き物の柱、といえば。

ロンドンの自然科学史博物館は、至る所に動物の装飾がほどこされてあって見ていて飽きない建築ですが、

こんな柱頭がありました。

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葉っぱに鳥がとまっているんです。
ハキュン☆

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05/12/2007

錯乱のニューヨーク

読書会のレジュメ

錯乱のニューヨーク レム・コールハース著 鈴木圭介訳 ちくま書房

[文庫解説より]

人間の欲望と一致するある神話的な到達点を自らの手で目ざし、現代文化の基礎として複合的な超過密文化を生み出した都市マンハッタン。理論のユートピア=摩天楼、理想主義の断片=ロックフェラー・センター、予想外の突然変異=ラジオシティ・ミュージックホール…。地表状をグリッドに仕切り数々の建物を打ち立てたこの都市の誕生・成立・発展の過程、さらにその可能性と限界を、多くの貴重図版とともにエキサイティングに描き出す。(磯崎新)

(注)「マンハッタンというメトロポリスはある神話的到達点を目ざす。すなわち、世界が人間の手によって作り上げられ、それによって世界が絶対的に人間の欲望と一致するような点をめざすのである」(本文より)

[はじめに] 本書の大意

「この島(マンハッタン)には異常な事態が発生しているのだ。…内容と形式の一致という近代建築のモラリティを形成する根幹部分が切除されている。これを矯正すべしと教えることが間違っている、とみればその錯乱状態をみずからの方法にするしか進むべき道はないだろう。」
(磯崎新)

「(この本は)メトロポリスにはメトロポリス固有の特殊化された建築が必要にしてふさわしいと言う議論である。」(本文より)

この本は、1970年代、モダニズムの観点からではなく、新しい観点からマンハッタンを評価しようという試みである。モダニズムvsマンハッタニズムという図式が全体としてみられ、言葉を変えて何度もでてきている。

・ モダニズム=ヨーロッパ理想主義、ピューリタニズム、「善良なる意図をもつアーバニズム」、「光・空気・植物」
・ マンハッタニズム=過密の文化、「快楽(享楽)主義的アーバニズム」


[本書の構成]
序章で明確な構図を示し、前史で原型的テーマを提示し、第1部から第5部でテーマ毎の詳細なケーススタディを行い、補遺の「虚構としての結論」においてテーマに対応したデザインを提示している。

◆◆◆

[序章]

「これはいわばマンハッタンのための<回顧的なマニフェストの書>なのである」

すなわち、「こう思って(これから)建築をたてますよ」ということではなく、既に建っている建築をみて「こう思ったから、この建築がたったんですよ」ということ。

◆◆◆

[前史](前提となるkey wordが多い、あとで読み返すとわかりやすい)

・ジョランの描いたニューアムステルダム(=ニューヨーク)の地図:まったくのでたらめ。ヨーロッパ的なものを凝縮してよせあつめた地図
・ グリッド:(←→対称軸、ヴィスタ)「マンハッタンはいかなる(急進的な)全体主義の介入からも永久に保護されることになる。ひとつのブロックー建築の管理を受け得る最大のエリアーがマンハッタンの都市的自我の最大単位となるのである」
・ タワー:「自己の領土の鳥瞰を提供することによって、集団的エネルギーと野望に突如として拍車をかける建築的装置」
・ 球:最小限の立地面積で最大限の容積が得られる構造
・ セントラルパーク:「人工のアルカディア絨毯」「ランドスケープ効果を増大させ、発展させる」「自然の要素は…凝縮され再構成される」(モダニズム的な公園とは異なり、自然の要素を人為的によせあつめている)
・ マンハッタンのパフォーマンスの戦略:表向きの目的と実際の目的の徹底した不一致(=表向きは実用主義、しかし実は本書の明かす「マンハッタニズム」がある)

◆◆◆

[第I章 コニーアイランド—空想世界のテクノロジー]
コニーアイランド=ミニチュア・マンハッタン、リゾート地
「のちのマンハッタンを形成する戦略と機構は、まずコニーアイランドという実験室でテストされたのち、最終的により大きな島(=マンハッタン)に適用される」

1820〜1880ころ:マンハッタン住民に自然を提供するリゾート地
1890〜1910ころ:テーマパークの繁栄(スティープルチェイス、ルナパーク、ドリームランド)
「(テクノロジーによって)体験を再生産し、ほとんどあらゆる感覚を人工的につくりだす」現実の凝縮装置
1930ころ:テーマパークの炎上跡地を公園化(←モダニズム)

<重要な戦略>
・テクノロジーによって凝縮された体験をつくりだす
・昼と夜:「電灯海水浴」、ルナパークの夜の電飾(都市は昼と夜で別の顔=魅力をもつようになる)
・グローブタワー:地面を再生産し、別世界をうみだす=「摩天楼」のはしり
・メタファーの使用:ルナパーク=月面世界を想定、ドリームランド:海底を想定

◆◆◆

[第II章 ユートピアの二重の生活—摩天楼]

摩天楼は3つの発明の融合によって徐々にうまれていく

1. 世界の再創造:エレベーターと鉄骨造の発明による、敷地の上方への無限反復。「各フロアの出来事は互いに全く関連がない」「個別の敷地があらかじめ予定された単一の用途ともはや合致することがないということ」(=プログラムの不安定化、垂直分裂)、建物は「それ自体において都市」となり、メトロポリスは「都市国家の集合」となる
←「マンハッタンは島(有限である)」ことと「ビジネスへの飽くなき需要」が敷地反復の名目

2. タワーの付加:ビルの上にタワーをのっけること
象徴、標識としてのタワーの意味を建物にとりこむ

3. ブロック丸ごと:ブロックひとつが開発単位となることが多くなる(ブロックの遊園地化、マンハッタン=ブロック島の群島)

「タワーは敷地の上方拡大に意味を与え、敷地の上方拡大は、グランド・フロア・レベルにおけるメタファーの展開を助け、ブロックの征服は、自分の島をひとり占めする占有者としてのタワーの孤立を保障する」


<摩天楼をあらわす概念>

「自己モニュメント」:「マスがある臨界量を超えると、建築物はすべてモニュメントに姿を変えるか、その大きさそのものの効果で少なくともモニュメントに変貌しそうな期待感を増大させる」これは特定の抽象概念を意味するモニュメントではなく「むしろそれは単純にそれ自身である」
しかし、モニュメント性(=永続、堅固、神聖を暗示する)と、変幻自在に生に対応しようとする要求は、通常相反する。

「ロボトミー」:マスがある臨界量を超えると、内部と外部の間の(精神的な)関連性がなくなる。(なぜなら、表面積は2乗的に、体積は3乗的に増加するから)
これによって、外観→自己モニュメント、内装→変化に対応できる。
「マンハッタニズムとは効率と崇高さを両立できるただ一つのプログラムなのである」

<摩天楼の具体例>
「マレーのローマ庭園」:文化・時空の異種交配「かって一度も存在したことがなかったのに、あたかも存在したかのように見えるシチュエーションの創造」
「ウォルドーフ&アストリア」:「旧アスター荘の要素を—文字通りまたは単に名目上—移植する」「まがいものの歴史…を生み出すマンハッタニズムの戦略」
「ダウンタウン・アスレチック・クラブ」…室内ゴルフコース、水泳プール、トルコ式浴場、医療設備「人間の肉体という自然に対し、機械による連続的な干渉」

<摩天楼をめぐる理論>
ヒュー・フェリスの摩天楼夜景木炭画…黒く塗り込められた夜の闇(フェリス空洞)=異種文化の影響をすみやかにのみこむ宇宙

ゾーニング法…「摩天楼とは無関係な建築に興味をもつ振りをして摩天楼をつくりだす土壌作りに勢をだす」(いつわりの実利主義)

ヴェネチアのメタファー…歩行者と自動車の分離の提案

◆◆◆

[第III章 完璧さはどこまで完璧でありえるか—ロックフェラーセンターの創造]

ロックフェラーセンター…もっとも純粋にマンハッタニズムのあらわれた建築

天才なき傑作、委員会(合議)による建築(1928年委員会発足)
「最大限の過密と最大限の美をともに追求する」

1929年大恐慌→ロックフェラーセンターに対する需要が稀薄になる(プログラム不在)
「建物のコンセプトの純粋性を脅かすに足る現実要素がまるで存在しない」

「ロックフェラーセンターの独創性は少なくとも5つのプログラムの同時進行という点にある」
1. 地下吹き抜け広場のヴィスタ:ボザール
2. ラジオシティ・ミュージックホール:コニーアイランドの遊園地群
(演出された日出と日没、オゾンの使用…「加速化された時間と過度の健康状態」=「テクノロジーによって濃縮された経験」)
3. TV、ラジオ局:電子的未来
4. エルギン植物園へのオマージュの庭園:再建された過去
5. 空中庭園:ヨーロッパ的未来(モダニズム)

RCAビルのロビー壁画:ディエゴ・リベラ(ソヴィエト社会主義の父レーニンが描かれている)

→「ロボトミー」「垂直分裂」により、外観とは関係なく内部に全く異なる様々な様式を同時にとりこむことができるマンハッタニズム

◆◆◆

[第IV章 用心シロ!ダリとル・コルビュジエがニューヨークを征服する]

ダリ…反モダン的マンハッタンの発見者
偏執狂的批判的方法(Paranoido Critical Method=PCM):「健全な精神を偏執狂の世界へと観光旅行させる」「証明不可能な理論的仮説のための証拠のねつ造作業」
すなわち、強引なコンテクスト+物的証拠の提示

(注)偏執狂=解釈妄想(すべての出来事をみずからの仮説に即して解釈してしまう)

ex. ミレーの「晩鐘」のPC的解釈
「この男女は性的欲望にかられて行動に及ぶ一歩手前のところで静止している。男は敬虔そうに帽子を脱いでいるが、実は勃起を隠しているだけなのだ。」

植民地化、マレーのローマ庭園、などはすべてPC的プロセス
マンハッタンはPC的に発見された

コルビュジエ…モダニスト

「輝く都市」はモダニズムからの「アンチ・マンハッタン」な提案

マンハッタンvsモダニズム
過密 vs 脱過密(公園都市)
内部と分離したファサード vs ガラスのファサード
多様なプログラム vs オフィスビル
歩行による移動 vs 自動車による移動(各建物は400m離れて建つ)
複雑な外形(偽りの実用主義) vs シンプルな外形

◆◆◆

[第V部 死シテノチ]

1930年代後半からマンハッタニズムは時代遅れとなる
大義名分と真の目的が異なったせいで、誰も本当のマンハッタニズムの正体を知らず、マンハッタニズムはうしなわれていく
多様だったプログラムは単一に

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04/15/2007

関西旅行と日本建築史

2007年3月24日〜28日
学科の関西旅行で歴史系の先生達とさまざま古建築をめぐってきました。

こういう旅行の良さは、「へ〜、これが三手先ね」みたいな細部の名称を覚えることもあるけれども、時代ごとの建築のイメージ、雰囲気、匂いがちょっとわかる気がするところです。

歴史の先生によれば「禅宗様は、濃い」であり、「すっきりしている」という某先生のイメージを完全否定していましたが。そういう感覚こそは、訪れてみなければ絶対わからない。

せっかくなので、忘れてしまうまえに、勉強をかねて、なにか各時代の「匂い」をとどめておけたらなあ、というのが主旨です。日本建築史あんまり勉強してないので、つっこみどころは満載でしょうが。

◆◆◆仏教伝来以前◆◆◆

24日、雨の中、伊勢神宮。
伊勢神宮は20年ごとに建て替える「式年遷宮」を行っている神社です。

湿気にけぶる、いかにも「神域」という感じの杉木立の中、内宮(祭神は、天照大神)に参拝。
すっごくわくわくしていって、実際見えたのはこんなんでした(笑

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正殿のまわりには瑞垣(みずがき)・内玉垣(うちたまがき)・外玉垣(とのたまがき)・板垣(いたがき)という四重の垣根がめぐらされていて、私たち俗人はかろうじて板垣の中に入れるだけなので、しかたがないのです。

実際の神殿はこのようなものらしいです。

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様式は、神明造(しんめいづくり)といいます。仏教伝来以前の日本の最も古い建築様式は、この伊勢神宮の神明造と出雲大社の大社造(たいしゃづくり)の2つと一応いわれます。高床で、切り妻屋根の建物です。

神明造は、反りのない切妻屋根で平入(ひらいり)。
大社造は、若干反りのある切妻屋根で妻入(つまいり、屋根の山形が見える方に入り口がある)。

神明造は見事に直線のみで構成されています。(そのため、伊勢神宮の大工は、大工としてはあまり上手くないんだよとF先生が言ってました。)
ヒノキの素木だけを使い、屋根は茅葺き。

柱はすべて掘立柱で、一番太い、迫力ある柱が棟持柱です。破風板が屋根をつらぬいてバッテンに交差している千木、屋根にごろんごろんと横に乗っている勝男木(鰹木/かつおぎ)

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この神社に使うヒノキは、非常に良質なもので、表にでる部分はほとんどフシもありません。(死にフシがとれた跡をきちんとうめているそうです)
外宮のあたりで、木材が池の中に貯蔵されていたり、建物の中で乾燥させられていたりするのを見学しました。

20年で遷宮というのは、ヒノキが劣化してしまうためでもあるし(掘立柱はとても腐りやすいのです)、神殿の「清純さ」を保つためでもあります。

ちなみに、式年遷宮の後の廃材はどうするのか、ということですが、棟持柱は鳥居に、他の部材は、全国の神社の修理材にまわされるのだそうです。神聖なものだから、役目を終えても、まちがってもタンスになんかしない(笑

式年遷宮のために、現在内宮のあるところのすぐ横に、次回の遷宮で内宮が建つ場所が用意されていました。
これはこれで、すごく神聖な感じです。

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◆◆◆仏教伝来後〜飛鳥・奈良時代の寺院建築◆◆◆

伊勢神宮のような簡素なものが仏教伝来前の日本古来の建築とされていますが、仏教伝来から後は大陸の寺院建築の様式がどおっと日本におしよせてきます。

屋根は反りかえり、柱は礎石の上に立てられるようになり、木には彩色がほどこさえれ、柱の上には組物(くみもの)がつくようになります。

瓦も伝来しました。とはいっても、日本では依然として檜皮葺(ひわだぶき/ヒノキの皮で葺いたもの)など、植物で葺いた屋根が寺院にも多く使われました。

寺院建築は、本尊を安置する「金堂」、経を講じる「講堂」、仏舎利をおさめる「塔」、「回廊」、回廊の正面に開かれる「中門」、 正面出入口門で南に面して建てられる「南(大)門」、などからなり、これらの配置の仕方を伽藍配置といいます。

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これは四天王寺の伽藍配置です。

他にも、経典を安置する「経楼」、鐘を吊した「鐘楼(しょうろう)」、「食堂(じきどう)」、僧が生活する「僧房(そうぼう)」などがあります。

塔や金堂が複数あったりすることもあり、伽藍配置にはさまざまあります。大陸から伝来した本来の伽藍配置は左右対称でしたが、日本では非対称な伽藍配置も生まれました(法隆寺など)。伽藍配置の話はそれだけでけっこう面白そうです。

◆◆◆和様(わよう)◆◆◆

大陸から仏教とともに入ってきた建築様式をもとに、平安時代に日本独自の建築様式として確立された様式を「和様」と呼びます。

今回25日に訪れた室生寺の五重塔は、平安時代に建てられたもので、奈良時代の五重塔のほぼ1/3のサイズですが、そのころの様式を伝えるものです。

塔とはもともと仏舎利を安置する「ストゥーパ」に「卒塔婆」という字をあてたもので、基本的に人が入るものではありません。

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なんだかとてもカワイイ塔です。丹塗りの軸に、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根。

カワイイと思う理由は、一つには、小さいということ。小さくても、風雪に耐えなければならないので、柱はあまり細くできません。それで、柱の間隔がせまく、柱が太く見え、ずんぐりした様子になっているのです。

全体的に細長く、相輪が全体の1/3を占める、など、独特のプロポーションを持っています。

組物の詳細はこんな感じ。三手先(3段階に送り出されている組物)です。
これがいわゆる「和様」です。

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地垂木(下の方の垂木)の断面が円形で、飛擔垂木(ひえんだるき/上の方の垂木)の断面が方形なのがシャレているなあ、と思いました。「地円飛角」というのだそうです。

組物の部材はとてもわかりにくいですが、各部の名称をわかりやすく示してくれているHPをみつけました。I先生に聞かれて「支輪」を答えられなかったわたくし、勉強しなおそうと思います(汗

◆◆◆平安時代の密教建築◆◆◆

平安時代に入ると、真言宗・天台宗の伝来とともに、密教建築が展開します。

密教建築の主な特徴は次の3つ。

1. 山上に伽藍をつくる
2. 多宝塔をもつ
3. 礼堂をもつ

1.室生寺などは、密教化する前から山のなかに建てられていましたが、それはむしろ例外で、山の中に多く寺院がつくられるようになったのは、密教からだそうです。当然、奈良時代のように整然とした伽藍配置ではなくなってきます。

2. 多宝塔は、27日に根来寺(ねごろじ)長保寺で見学しました。

根来寺の多宝塔
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ちなみに、F先生いわく軒を支えているつっかえ棒みたいなものは、「見ないようにする」ものらしいです。

長保寺の多宝塔
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多宝塔は、なんだかまるっぽいお饅頭のようなものがついていますが、平面は四角いのが普通です。

でも、根来寺だけは一階内部に円形の内陣をもっています。(このような多宝塔を大塔とよびます)
障子もカーブしてつくっているあたり、芸がこまかい。とても美しい内部でした。
Negoroji


3. 礼堂をもつ、とはどういうことか、というと。

奈良時代の金堂は仏をまつる、厨子のようなもので、僧でも特別な時以外は入ることをゆるされませんでした。

けれども、平安時代に入り、金堂など主要な堂の前に礼堂という、細長い建物がつくられるようになります。これは、人々が礼拝のために入る場所で、いわば 俗人のための建築ということになります。

やがて、金堂と礼堂は、一つ屋根の下に入り、中世(鎌倉時代以後)以後の密教建築の形式が完成します。


その代表が26日に見学した奈良県にある當麻寺(たいまでら)本堂(通称曼荼羅堂)です。

平安時代に建った堂を内陣にとりこみ、拡大して外陣(礼堂)を設けた建物で、前方梁行三間を外陣、後方梁行三間を内陣としています。

Touma

組物は平三斗で、堂は東をむいて建っています。

ちなみに、この寺は、軸が交差するめずらしい寺です。今の正面の東大門とこの本堂は、東を正面としています。ところが、本堂の前方左右にある講堂と金堂、東西両塔は南を正面としているのです。ちょうど本堂の前方でこの二つの軸が交差します。

また、前出の室生寺の金堂は平安前期に建てられ、後に江戸時代に懸造り(かけづくり/斜面にもたせかけて造られ、床が長い柱で支えられた建物の形式)の礼堂が付加されたものです。

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これは私が撮った写真じゃありません。たぶん広角レンズじゃなきゃとれないと思います。

屋根を見ると、礼堂の部分が不思議な勾配でついているのがわかります。
Img_4309

南を向いて建ち、正堂は桁行五間×梁行四間、それに梁行一間の礼堂がついた形。杉材でつくられ、屋根は柿葺(こけらぶき)。

細部はこんな感じです。
Img_4310

組物は簡単な大斗肘木(大斗の上に舟肘木がのっているもの)で、さきほどの五重塔に比べると技術上も格式も下級だとわかります。

余談ですが、F先生いわく、室生寺を有名にしたのは、写真家・土門拳の撮った仏像の写真だそうです。
そういえば、写真いっぱい飾ってあったなあ。

◆◆◆鎌倉時代の新様式◆◆◆

日本の中世は鎌倉時代からはじまります。

平安時代までの伝統的な「和様」に対し、中世には大陸の影響をうけた「大仏様(だいぶつよう)」「禅宗様(ぜんしゅうよう)」という二種類の建築様式が登場します。

「大仏様(だいぶつよう)」は、日本建築史上のヒーロー(?)重源上人が東大寺再建のために用いた独特の様式です。重源上人は「入宋三度(宋に三回留学した)」という経歴の持ち主で、大仏様は直接に大陸の建築様式の影響をうけたものでした。

重源上人が、東大寺に先立って兵庫県に建立した「浄土寺浄土堂」という建物が、今でも残っています。
私は去年末に見に行ってきました。

Img_0066

組物の細部はこんな感じ。
Img_0068_1

大仏様の特徴は、

1. 大斗・肘木・巻斗と積み上げられていく和様の組物ではなく、挿肘木
(柱から直接突き出てくる肘木)を用いた組物
2.組み物の間に遊離尾垂木を用いて小屋の荷重を支える。
3.二軒(地垂木と飛擔垂木の二段の垂木)ではなく、一軒(地垂木のみ)の昔にもどっている。
4.軒先には鼻隠し板が使用されている。
5. 柱を貫通した部材の先端に木鼻をつくりその上部や下部に繰形(くりがた)をつける
6. 扉に桟唐戸を用い、扉の軸を藁座で受ける

…とかいわれても、チンプンカンプンですよね、図がないと。
でも、これだけ新しい言葉がでてくるってことは、大仏様がいかにそれまでの和様と違うかってことが雰囲気でもわかると思います。

って、放置するのもなんなので。いまの時代、便利なもので、これまたわかりやすいHPがあったり。すごくわかりやすい。なるほど。

前述した、室生寺の仏塔の組物と比べてみるとわかりやすいと思います。特に大仏様の扇垂木と和様の平行垂木の違いはイッパツでわかります。

でも、浄土寺浄土堂の面白いのは、外部じゃなくて内部なんです。これは、すごい。
内部写真とれないのでパンフなのが口惜しいですが。

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これで見て分かる通り、天井は張っていなくて、垂木がそのまま見える。すごくダイナミックです。
こういうのを「化粧屋根裏」といいます。

断面形状が円形の虹梁を用い、虹梁の下端に白い錫杖彫りを施しています。

「ここに構造の持つ力の美しさが、創始者重源の溢るるばかりの熱が表現されている」とは大田博太郎先生。

浄土寺浄土堂については石山修武のコラムも面白いです。

◆◆◆大仏様のその後◆◆◆

大仏様は、重源が建てた建物だけで終ってしまい、現存するのは、この浄土寺浄土堂や、東大寺南大門などほんとうに少しだけです。

けれども、木鼻、桟唐戸、皿斗などのディティールは和様にとりこまれ、新しい和様を形成していきます。

例えば、鎌倉時代後期にできた室生寺の本堂には大仏様の桟唐戸や大仏様の木鼻が使われています。

20060835

200610836

◆◆◆禅宗様◆◆◆

大仏様より遅れて、12世紀末、栄西による禅宗の伝来とともに鎌倉時代のもう一つの様式「禅宗様」が登場します。

たとえば建仁寺の伽藍配置を見ればわかるように、禅宗寺院は伽藍の配置から独特のものがあります。

総門・三門・仏堂(金堂にあたる)・法堂(はっとう/講堂にあたる)・方丈と真ん中に並び、右に僧堂、東司、左に庫院(くいん)、浴室があるのが、典型的な禅宗の伽藍配置です。

禅宗様の特徴は、
1. 一重裳階(もこし)付きの形式で、主体部の柱と裳階の柱を海老虹梁でつなぐ

裳階の説明はこちら

1,勾配の強い、大きな反りのある屋根、垂木は扇垂木
2. 柱の上だけではなく、柱の間にも組み物を持つ(詰組(つめぐみ))で間斗束・蟇股は用いられない。
3. 欄間に波形の連子、窓に花頭窓
4. 頭貫の上に台輪をおく
5.粽(ちまき/上部または上下部をすぼめる)付きの柱を柱礎の上に置き、床は土間。

化粧屋根裏、桟唐戸など大仏様と共通する特徴もありますが、一般に、太い部材をつかった大胆な大仏様に比べ、禅宗様は部材が細く、やや繊細な様式です。

去年の夏に撮った建仁寺浴室の写真があります。

Img_0034

ぎっちり詰まった組物や、そった屋根、花頭窓などがわかると思います。

大仏様とおなじく禅宗様も、ディティールは和様にとりこまれていきました。

今回の見学でも、禅宗様のデティールをいくつか見ることができました。
なかでも1311年につくられた長保寺本堂は外観は和様なのに内陣がすごく禅宗様という、折衷様のお寺で、禅宗様の詰組や、粽の様子が見られます。

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…いろいろ見ましたが、このへんで中断。また勉強しようとおもいます。

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12/22/2006

あなたに、すごく、聞いてほしい。

Saitou

建築学科のあなたも、そうでないあなたも、ちょっと、5分だけでもいいから、俺の話をきけー!じゃなくって、聞いて下さい。

はい、まず、手帳を開いて。
2007年1月11日(木)午後6時から2時間の予定を、開けてください。

111で覚えやすいでしょ。
そして、場所は東京大学工学部1号館。
1ばっかりです。

この日に起こることは、誇張ではなくて、あなたの人生の宝物になる…かもしれません。

◆◆◆

いきなりですが、人間は「衣・食・住」を基本に生きているわけで。

だったら、建築学科の人だけが、建築に関心があるのだったら、悲しい世の中じゃあないですか。

食事に関心がない、というのが寂しいのと同じくらいに、建築に関心がない、というのだって、とてもとても寂しい。

将来家を建てる人もいると思うけれども、建築に関心がない人は、そういうときに、何を基準にどんな家を建てようと思うのでしょうか。

自分の中に、「いい建築」の基準を誰でも持っているはずです。

そして、その基準をブラッシュ・アップするのには、やはり、少しばかりは、建築のことを知っていたほうがいい場合もあると思うのです。

「いい建築」というのは、もちろん、値段とかの問題ではなくて。

建築家はわけのわからない理屈をふりまわす存在と思われているふしがありますが、

建築が、そんなに分かりにくいものなわけがない。

一生に一回は見ておくべき名建築、

そういう名建築を、すべての人にわかるように語れなければウソだ、と言ったのは、建築家の斎藤裕。

◆◆◆

トップにあるポスターの通りですが、
私が広報として所属してる「建築集団A+」という学生サークルが、難波教授の助力を得て、交渉を重ねていた「斎藤裕連続講義」が、ついに実現することになりました。

テレビの「日本一聞きたい授業」みたいな企画ですが、建築を見ることにかけてはとにかく定評のある斎藤裕が、「ほんとうにいい建築とはどういうものなのか」という根源的なところを、語り尽くす、という授業です。

人の言うことよりも、自分の体得したことだけを信じる斎藤さんが、人生で建築について学んだことの要点を、誰にでもわかる言葉で、できる限り語ってみよう、というモノ。

スカルパ、カーン、コルビュジエ、ライト…といった超×1億巨匠建築ばかりの授業。しかも斎藤さん自身の撮影によるスライド。

これで、面白くないわけがない。
建築学科の学生には垂涎ものの授業です。

ちなみに、建築学科でない人は、「斎藤裕って誰?」って感じでしょうが、例えば、日本の本屋でスカルパやアアルトの写真集を手に取ってみれば、それはかなりの確率で斎藤裕の監修&撮影だと思います。

写真家ではないですが、彼が建築の写真を撮ると、本当に美しい。
それは、その建築の魅力を、充分に分かっているからできることなのだと思います。

実際、ある建築が一番魅力的に見えるのは、何月の何時ころか、までわかっています。もちろん、それは人に教えられたことではなくて、ただただ、見続けたから知っているわけです。

◆◆◆

で、ポスターにある通り(このポスターは、東大の難波教授のHPでも見られます。こちらの方が解像度がいいので、見てみて下さい。http://www.kai-workshop.com/index.html)

全8回の、第1回が

1月11日(木)18:00-20:00@東大工学部1号館15号講義室

で行われます。

初回を飾るテーマは、巨匠ルイス・バラガンの建築。(写真はバラガンの建築の一部です。)

Images2_1 Images1_2

予約不要。お金は500円の資料代だけ。とにかくその日、その場所に来てくれれば聞くことができます。

(ただし、話を聞く姿勢を大切にする斎藤さんの意思により、遅刻だけは原則ナシでおねがいします。)

スタバでだべってたらそれくらいの時間は経つかもしれませんが、とにかくその2時間だけは、明けてきてください。

デートの予定がある人は、恋人をつれて、
家庭教師の予定がある人は、生徒をつれて、
授業の予定がある人は、教授をつれて、

きてください。

みんなの、2007年のスタートを飾るのに、これ以上ない日になるはずです。

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07/17/2006

試験勉強・その1

またやってきましたよ、試験の季節が。
今回は私の大っっっっ嫌いな、物理や計算系が多いので、やる気も低迷中です。

というわけで、また現実逃避をかねて、「試験勉強シリーズ」でも書こうかな、と。(進歩ゼロ)
記録に残しておいたら、多少なりとも院試とか楽にならんかね〜と思っているのですが、ならないだろうなあ。

◆◆◆

一番はじめの試験は「音環境」です。

音の話というのは、雑学的に聞く分には興味がなくもないけど、数式をみるとげんなりする、という感じです。

雑学的っていうのは、例えば、このまえ「建築のエッセンス」(斎藤裕・著)を読んでいたら、こんな話がでてきました。
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「斎藤ー北京に天壇という、皇帝が天下を占ったりした祭祀のための建築があって、その境内に回音壁、英語ではエコー・ウォールと訳されていましたが、そんな面白い壁があります。十六世紀にできたもので、五〇メートルほどの長さで曲面になっています。壁の前でヒソヒソと話をすると、壁に耳をあてれば五〇メートル先でも聞こえるというものです。本当にそんなに音が伝わるものだろうかと思って確かめてみました。すると、ちゃんと聞こえるんです。音のまわり方というのは不思議ですね。」

音を反射する壁がおおきな凹曲面をつくっていると、音がその面にそって滑るように何回も反射して、こういう現象がおこるんだそうです。

ってね、そういう話はちょっと面白いんですが、私は、なにをかくそう物理の計算式が超キライなので、細かい議論はすっとばしたい。イメージで全体を把握できればいいかな、という方なので(ほんとに工学部か)、そのつもりで勉強します。おおざっぱに鳥瞰できれば、今回は、よし。

◆◆◆

まず「音の大きさ」だの「パワーレベル」だの、尺度が多いので、はじめがちょっとめんどいです。

音は、縦波。すなわち疎密波。

ということは、音が生じると、空気の成分が疎なところと密なところができるわけですが、
疎なところは圧力が大気圧より低くなり
蜜なところは圧力が大気圧より高くなる

音波がある点を通過するときは、疎密が交互にやってきて、圧力が上がったり下がったりを繰り返します。

というわけで、圧力の変化した分(大気圧よりどれだけ上がったり下がったりしたか)を「音圧(p)」と呼びます。

この時、空気の成分の運動速度を「粒子速度(u)」と呼びます。

ここで、考えてみると、圧力が大気圧よりも上がったり下がったりしたら、元に戻ろうとするチカラが強く働くわけだから、粒子速度の絶対値も大きくなるわけです。
だから、音圧と粒子速度は一緒に上下する。すなわち同位相。

式にすると、
p=ρcu

ρは媒質の密度、cは音速。だから、ρcはほぼ定数と考えていいんじゃないかなと。(適当)

あと、音が伝播してる空間のことを「音場」と呼びます。

◆◆◆

音に関して、まず超重要な尺度をいくつか。

1. 音響パワーW:音源を単位時間に発する音のエネルギー。すなわち、音源に対する評価値。
一般に、エネルギーを単位時間に直したものがパワーなので、単位はW=J/s。

2. 音の強さ(intensity)i:音波の進行方向に垂直な単位面積を単位時間に通過する音のエネルギー。 (※大文字のI(アイ)だとこのフォントで見づらいので小文字のiにしておきます)
単位はパワーをさらに面積で割った、W/㎡。

ところで、(電力)=(電圧)×(電流)という古い知識を掘り起こすと、実は音の強さと音圧、粒子速度の関係をこれに対応させて理解することができます。
すなわち、(電力)→(音の強さ)、(電圧)→(音圧)、(電流)→(粒子速度)

i=pu=p(p/ρc)

音の強さiは音圧pの2乗に比例します。

3. 音のエネルギー密度E:音場の、単位体積あたりのエネルギー。単位はJ/㎡。室内音場のように、音がさまざまな方向に伝播してるところではこの指標をよく使います。

いま、強さがiの音波を考えると、1秒間に単位面積を通過するエネルギーがiだから、[単位面積×c(1秒間に音が進む距離)]の容積にエネルギーがi含まれると考えられるので、

E=i/c

以上。とりあえず、今まででてきた尺度はp, u, W, i, E。

◆◆◆

ところで、pやiやEといった音の尺度には、レベル表示というものがあります。

例えば、人の耳に聞こえる音圧pの範囲は0.00002〜20Paまでの幅があります。オーダーにして6桁。
エネルギーは音圧pの2乗のオーダーなので、12桁。(←i=p(p/ρc))

そんな数値をそのまま扱ったら、ゼロがおおくてめんどくなるので、対数で表記し、これをレベル表示といいます。

レベル表示=対数を使った表記です。

Aという尺度のレベル表示は
LA=10log10(A/A0

単位はdB(デシベル)

A0というのは基準値です。
たとえば、基準値を可聴域の最も小さな値に設定すれば、12桁の幅のある数値を0〜120くらいまでのレベルで表記できるわけです。

◆◆◆

Wをレベル表示→音響パワーレベルLW=10log10(W/W0

iをレベル表示→音の強さのレベルLi=10log10(i/i0

Eをレベル表示→音響エネルギー密度レベルLE=10log10(E/E0

pをレベル表示→音圧レベルLp=10log10([p2乗]/[p02乗])=20log10|p/p0

音圧はプラスマイナスがあり、2乗してレベル表示します。
2乗することで、 I, Eとだいたいオーダーがそろい、Li、LE、Lpはだいたい同じくらいの値になります。


☆☆☆☆
[問]
ある音響出力の機械を1台運転したときの音の強さのレベルが76dBとすると、同じ機械を2台同時に運転したときの音の強さのレベルはいくらか。

[答]
いま、Li=10log10(i/i0)=76dB。
2台になると、音の強さが2倍になる。

すなわち、10log10(2i/i0)=10log10(i/i0)+10log102

log102=0.3010より、

だいたい3大きくなる、と考える。 よって答えは79dB。

音源が2倍で3dB上昇、というのは記憶! です

[問]
幹線道路沿いのある地点において騒音レベルが70dB(A)である場合、交通量が1/4に減少するものと仮定すると、騒音レベルはいくらになるか答えなさい。

[答]
騒音レベルとはA特性の重みつき音圧レベルのことで、音圧レベルと同じように考えていいので、
「音源が2倍で3dB上昇」が使えます。
1/2倍×2だから、6dB減少。答えは74dB(A)
☆☆☆

◆◆◆

さて、ここで、音の「強弱」「大小」「高低」の関係について。

「強弱」は上で述べたdBで表記できます。要はエネルギーの大きさです。
「高低」は音波の周波数で決まります。人の耳に聞こえる周波数はだいたい20〜20000Hz。

では、「大小」はなにかというと、「強弱」がエネルギーという客観的な値なのに対して、「大小」は人の耳にどう聞こえるかという、とても主観的なものです。

同じ「強さ」の(音圧レベル[dB]が同じ)音でも、「高さ」(周波数)によって、人間の耳に聞こえる音の「大きさ」は異なります。

ある音の大きさを、それと同じ大きさに聞こえる1000Hz=1kHz純音の音圧レベル[dB]であらわしたものをラウドネスレベルといい、単位はphonを使います。

この音の「強弱」「高低」「大小」の関係を表したのが、「等ラウドネス曲線」です。

Touloudnesskyokusenn_1

縦軸が音圧レベル(強弱)、横軸が周波数(高低)。
phonの定義から、周波数1000Hzのところは曲線が音圧レベルの線と重なっています。

3000〜5000Hzのあたりは一番感度が高くて、ちょっとの音の強さでも大きな音にきこえます。
逆に、低音域(左の方)では感度がニブい。

たとえば、一番左では60phonの曲線が100dBあたりにきています。
1000Hzの高さで60dBの音と同じ大きさの音を20Hzで出そうとおもったら100dBもの強さでなくてはならないということです。実に40dBも違う。

でも、上の方(高いレベル)になってくると、周波数によってそこまで差はなくなります。
音響出力が小さいときは、音の高さによって全然聞きやすさがちがうけど、
音響出力が大きいときは、音の高さをかえてもたいして聞きやすさはかわらない
ということ。

(ところで、「音の強さi」に対して「音の強さレベルLi」があるように、「ラウドネスレベルphon」に対応する「ラウドネス」という指標はあるのかというと、あります。単位はsone。
音の大きさが2倍になれば、phonは2倍にならないけれど、soneは2倍になります。
ラウドネスレベルが40phonで1000Hzの純音の大きさを1soneと便宜的に決めて算出します。phonはsonの対数をとったものに比例。)

◆◆◆

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カラオケで、誰かが「タッチ」を歌っていたら、サビの♪お願い、タッチ、タッチ、ここにタッチ♪という部分の上のパートを歌ってハモるのが好きです。(なんの話だ)

ハモり、というのはなんで常に主旋律より上なのかというと、それはマスキング効果というものです。
マスキング効果とは、騒音が目的の音をきこえにくくする(マスクする)現象のことです。

マスクするほうの音(騒音)をマスカーmaskerといい
されるほうの音(目的の音)をマスキーmaskeeといいます。(employerとemployeeの関係)

例えばハモりがマスカーとなって主旋律を消してしまってはまずいわけですが、都合のいいことに、マスカーより低い音はほとんどマスキングされない、という性質があるので、ハモりが主旋律より高ければ、まあ大丈夫、ということになります。

ほかの性質としては
○マスカーの音が大きいほどマスクされやすい(あたりまえ)
○マスキーがマスカーの周波数に近いほどマスクされやすい

など

◆◆◆
お風呂で歌を歌うと、ぐわーんと声が響いて「エコーがかかって聞こえる」などと言いますが、エコー(反響)残響は異なります。

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話はそれますが、ギリシャ神話では、エコーは木の精で、ゼウスの妻ヘラの怒りを買い、自分からは話かけることができず、誰かが話した言葉を繰り返すことしかできないようにされてしまったことになっています。エコーはナルシストの語源のナルキッソスに恋したけれど、話しかけることができないために相手にしてもらえず、屈辱と恋の悲しみから次第に痩せ衰え、ついには肉体をなくして声だけの存在になった、それがやまびこだとか。
そうか、エコーってやまびこのことだっけ、と思うお話。

残響と反響にもどると、

室内で音を発すると、周りの壁などで音が反射するため、音源が止まってもまだ空間に音がのこっています。これを、残響といいます。

反響(エコー)は直接音と反射音が時間的に大きくずれたため(だいたい1/20秒以上)別の音として聞こえることをいいます。やまびこみたいなものです。

エコーの中でも、フラッターエコーというのは音響障害の一種で、平行な壁面の間を音が反射、往復して多重に聞こえる特殊なエコーのことです。

☆☆☆
[問]
音響障害としてのフラッターエコーを回避する方法を列挙しなさい。

[答]
・平行壁面を避けて、壁を傾ける
・壁に波長程度の凹凸をつける
・壁に吸音処理をする

[問]音声明瞭度を確保するための対策方法を列挙しなさい

[答]
・音声の平均レベルをあげる
・残響時間を短くする(残響時間が長いと先の音が次の音をマスクするため言葉がききとりにくくなる)
・騒音レベルを小さくする(騒音レベルが大きいと音声を大きくマスクするため)
・室形を工夫する
☆☆☆

◆◆◆

残響を量として表すのには残響時間という指標を使います。

残響時間≡定常状態の室内平均エネルギー密度(E)レベルが60dB減衰するのに要する時間

すっとばして結果だけいうと

残響時間T=KV/A   (単位s)

ここで比例定数K=0.161、Vは部屋の容積[㎥]

Aは室内総吸音力という、吸音の量をあらわす指標で、空室の場合

A=S(部屋の表面積)×<α>(平均吸音率) (Aの単位は㎡であることに注意。)(※αについて詳しくはあとで)

従って、残響時間は室容積に比例し、吸音力に反比例します。

☆☆☆
[問]
一辺10mの立方体形状をした室の残響時間を答えなさい。ただし、室内の平均吸音率を0.2とする。

[答]
V=10×10×10=1000㎥
A= S×<α>=10×10×6×0.2=120㎡
T=0.161V/A=0.161×1000÷120≒1.34s

[問]
室内に人が多い場合と少ない場合とどちらが残響時間が長くなるか。

[答]
人は実はけっこう音を吸収します。
よって、室内に人が多いとAが大きくなり、残響時間は短くなり、少ないと長くなります。
☆☆☆

◆◆◆

上ででてきた吸音率αについて

21560

壁面に対して入射した音のエネルギー(Ei)の行方は、

・反射音のエネルギー(Er
・壁に摩擦熱として吸収されるエネルギー(Ea
・壁の向こうに透過する音のエネルギー(Et
にわかれます。

吸音率は、入射した音のエネルギーに対する反射されてこない音のエネルギーの比率です。

すなわち、入射音のエネルギ−(Ei)に対する、

壁に吸収されるエネルギー(Ea)と透過音のエネルギー(Et)の和

の比率です。

α=(Ea +Et)/Ei

吸音率が高いからといって必ずしも壁に吸収されるエネルギーが多いわけではありません。
たとえば、障子のような、音がつつ抜けの壁でも吸音率は高い、ということになります。

38556

◆◆◆

透過率τは、入射音のエネルギーに対する透過音のエネルギーの比率です

τ=Et/Ei

これをデシベル単位であらわしたものを透過損失TLといいます。
TL=10log10(1/τ)

例えば、透過率τ=1/10000なら、TL=40ということになります。
対数の中身を逆数にしているのは、10log10τだと値が負になってしまうから。

透過損失に関しては質量則というのがあり、(プリントがあればp.9ですが)
また結果だけ書くと

TL=20log10(f・m)−(定数)

ここfは周波数、mは壁の面密度(単位体積あたりの質量)です。
周波数または面密度が2倍になれば透過損失は20log102≒6dBずつ大きくなります。


☆☆☆
[問]
透過損失30dBのコンクリート壁三枚を重ねあわせた場合透過損失はいくらか。

[答]
面密度が3倍になったと考えればいいので、20log103増える。
ここで、log103=0.48より、
30+0.48×20=39.6


[問]
透過損失30dBのコンクリート壁に透過損失10dBの板材を張り合わせた場合、透過損失はいくらになるか答えなさい。

[答]
(30-10)÷2=10
プリントp.1のレベルの合成の表でL1−L2の10のところを見ると、0.4とあるので、
L1+2=30+0.4×2=30.8dB
(たぶん…、違ったら教えてください)
☆☆☆

◆◆◆

ひとまず、ここで中断。

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03/11/2006

花に嵐の譬えもあるぞ。「サヨナラ」だけが人生だ

「あしもとの湖」は無期更新停止にしようかと思います。

今まで1年と3ヶ月ご愛読くださった希有なみなさま、本当に、ありがとうございました。またお会いしましょう。このページ、触れずに置くけど、更新しないと消されそうな気がします。(無料のものだし。)

いまさらですが、「あしもとの湖」の由来は、私の名前が友達の携帯に、「地下湖」って入力されてたからです。このタイトルだけはちょっと気に入ってました。

◆◆◆

(以下、「いい訳」なので、暇でない人は読まなくてゼンゼン大丈夫です。)

いや、訳っていうほど訳はないんだけど、最近、ネットのコワさを色々と説かれたわけですよ。きっかけは、学科の人6人くらいに、「たまたま検索してたら、あなたのブログみつけたんだよね」と(主に半笑いで)言われて、そりゃもう、顔面から血を吹くかと。それくらい恥ずかしかった。(授業の内容かいてたから、考えたらそりゃあたりまえなんですけどね。)

で、そういう話を友達にしたら、「ネットはコワいよ〜」と脅されました。どうやら多くの人がミクシィで日記を書くのは、検索にひっかからないから、らしいですね?(←そんなこともわかってなかった人。そういえば、フリーメーソンについて書いたときは密かに「地雷踏んだかな?」と思いました。)

無神経に建築の批判でも書こうものなら、万が一にでもどっかのえらい人の目にとまって、この世界で生きていけなくなっても困るし。

ついでに言うと、すでに友達である人に、「ねえ、私とほとんどしゃべったことなくて、このブログみたら、どう思う?」と聞いたら、「すんごい、濃い人だと思う。」とか、まあ、暗に「ひく。」と言われた気がするので…ね。

これを読んで、私とお友達になるのをやめた方がなければいいな、と切に願うばかりです。自分では、文章を書くのが平均よりちょっと早くて長いだけの普通の女の子だと思っていますので、(不幸にも)私の口から発した言葉より、書いた言葉に触れる方が先だった方は、とりあえず、生のワタクシと喋っていただきたいな、と思います。

◆◆◆

最後に、西新宿について。

西新宿(特に都庁のあたり)って、綺麗なんだけど、ビルばっかで商店少ないし、ビル風すごいし、ちょっと心細くなるエリアだったんですが、最近好きになりました。

どのビルみても「あ、授業でやった」と思うし。そうなると、愛着がわいてきます。

でも、愛着KingはNSビルなんですよね。生まれて初めて行ってみました。

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「デートスポットらしい」などと聞きかじりで書きましたが、気合いの入ったデートにはむかないかもね(笑)。でも普段の時ならば、リーズナブルに夜景を放出してくれるし、何よりあの大アトリウムの空間体験がウケるんじゃないかと推測します。「基本はセンチュリーハイアットなんだけど、何か?」という人には何も申しませんが。

別にデエトに限らず、金と銀の壁と時計とか、レインボーカラーのエレベーターとか、そういう謎なセンスを気にしなければ、野村ビルの半分くらいの値段で、食事ができるし、いいとこです。(私が行ったとこは、こんなとこでした)エレベーターの展望もすばらしい。「無料展望エレベーター」ってちゃんと書いてあるし(笑)

せっかくなので、NSビルの話の写真を自分で撮ったものに差し替えておきました。(ゆえに画質はおちてますが、こまかいところとかちょっと詳しくわかるかも。)

しばらく写真が載せられない気がするので。(ココログは勝手にのせてくれるけど、mixiになると載せ方がわからない。)私にパソコンのこと聞いてもお役に立てない可能性大です。htmlタグもほぼ知らないし。情報処理「可」ですから…。

◆◆◆

新宿西口の地下通路には、柱間にこういう謎なオブジェがあります。

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今まで気にもとめてなかったんですが、友達が、「これでホームレスの人がここに寝られなくなって問題になったってテレビでやってた」と言いました。

そういう意図があるんでしょうか。なんか、梅のことといい、気づかないところで様々な作為があることにびっくりします。

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03/10/2006

オリバー・ツイスト

「はじめて子供をきちんと描いた」と言われたりする、チャールズ・ディケンズの名作の映画化です。

オリバーくんがこれでもかというくらい辛酸嘗め尽くしたあとに幸せになる、ただのシンデレラ・ストーリーなんだと思ってたら…甘かった。途中眠くても、最後は泣きます。

とにかく役者がうまい。ユダヤ人悪党フェイギンは「ヴェニスの商人」のユダヤ人高利貸しシャイロックに重なるような悲しい役ですが、「サーの称号を持つ名優」の奇怪な演技の迫力はすごかったです。

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「オリバー・ツイスト」は明治44年に「小櫻新八」として(←なんで?!)日本に紹介された、というのを授業で習ったことがあります。
孤児オリバーが、救貧院の夕食の席で「おかわり」を求め、救貧院を追放されてしまうのですが、その部分は、こんな。

「粥は忽ちにしてペロリと嘗め尽くされた。子供等は囁きあつて、皆新八に目配せした。新八の両脇に居た子は頻りに新八の尻を突ッついた。新八はスックと立ち上がり、椀と箸を持ってツカツカと賄方の前に進み出で、自分ながら驚いたほど思ひきつて、『モウ一杯お粥が欲い!』と大きな声でヤッテのけた。」

匙も箸になってます。「粥」も翻案で、本当はポリッジというオートミールをどろどろにしたものらしい。"Please, Sir, I want some more."というセリフはとっても有名なんだとその時先生が言っていましたが(どう有名なのかは不明)、映画では「もっとください。」という簡単な字幕であっさり片付けられていました。

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東京駅の柱

「東京駅の山手線有楽町方面行プラットフォームの先頭の部分の柱は明治末期の鋳鉄の柱だ」という情報をgetし、「ほんとかな〜」と、山手線に乗ったついでに見てみたら。

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…ほんとだった。

今まで全然気づかなかったのが不思議なくらい、明らかに雰囲気が違いますね。特に柱頭が。

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これがリベット打ちなのかな(ボルトっぽいのもありますが)。トラスみたいな構造になっています。

ちなみに、普通の柱はこんなんです↓

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ここまで優雅な柱はそうそうないでしょうが、ただのリベット打ちの柱なら、山手線内、結構残っているみたいです。山手線の中から見たら、新橋の柱もこんなトラス&リベット打ちになっていたように見えたし(確信はないです)、秋葉原にも残っていると聞きました。面白いですね、プラットフォーム。

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03/08/2006

リベンジ!代々木競技場

今日は「思いっきり寝るぞ〜!」と思ったら、案の上おきたときには太陽は高くて、いい天気だったので散歩にでかけました。

前には見られなかったけど、代々木体育館の中がみたいな〜、と、あまり期待せず行ってみたら、特別にちょっとだけ見せてもらえました☆

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代々木競技場ってスケールが大き過ぎて、見てもなかなか全体像が見えないんだけど(ましてや写真じゃ)、公式HPの鳥瞰写真で見るとかなりわかります。

丹下健三によって東京オリンピックのときに設計されたもので、右の大きいのが第一体育館、左のが第二体育館、その間をとおる道みたいな細長い建築から成り立っています。

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第二体育館(付属体育館)

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中をみせてもらったのは、第二体育館です。
練習プールのあたりを不振にうろうろしていたら、係員の人が管理室まで連れてってくれて(連行?)、管理室の人が「本当はいま体育館使ってるけど、巡回のついでに見せてあげる」と言ってみせてくれました。

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入ってすぐ見える、水井康夫作の花崗岩のレリーフ。
(※もらったパンフによると「旅・火・重さ・薫り・熱心・智慧」をあらわした連作なのだそうですが、これがどれなのかは不明。)

第二体育館の特徴である、高さ42mのポールはトップライトになっていました。この光景はちょっと、息をのみます。

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この体育館は収容人数3000人ほどのバスケコートです。子供のバスケチームがバスケをしていました。

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その管理室の人が「うちほど使われている体育館は世界に他にない」と言っていましたが、この体育館、年間350日くらい使われているとか。

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第一体育館(主体育館)

大きなケーブルで屋根を吊った、「吊り構造」の建物です。

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こっちは、ファッションショーの準備中で、エントランスまでしか入れませんでした。

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志水晴児作の大理石の彫刻。テーマは「岩」だそうです。(そのテーマ、必要なの?)

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第一体育館ってプールだと思っていたら、プールは廃止されてしまったそうです。現在、水泳の公式試合はタッチパネルでタイムを計りますが、タッチパネルを入れようとするとプールの長さが3cmほど短くなってしまって公式試合に使えないとか、コースもたりないとかで。今はプールに板を張り、普通の体育館・催事場として使用してるそうです。収容人数は14000人ほど。

40年もたつと、いろいろあるんですね。

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コンクリートの表面は、いまは吹き付け材で仕上げてありますが、以前はコンクリート打ちっぱなしだったそうです。型枠の木目が見えて、きれいだったと言っていました。

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メンテナンスの大掛かりさは半端ではないらしいです。屋根を半分塗装し直すだけで、1億くらいかかるとか。

実は体育館の天井にアスベストが使ってあって、この8月から張り替え工事にかかるらしいのですが、その費用も莫大。
「この体育館の利用費が年間で1億くらいなのね。そこから光熱費をひいて、私たちのもらう分は年3千万くらい。それで、40年だから、12億くらい。でも、今度の天井の工事費は12億でも全然足りないんだから、40年間なにしてきたんだろうって、思っちゃうよね。」
おもいっきり、経営、まわってないじゃないですか。

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その人は、「日本の建築家はスポーツ施設をわかってない」と言いました。その心は。
「換気とかは別にして、体育館に窓はいらないんだよ。ずっとカーテンかけてると、そのカーテンの維持費がかかるでしょ。しかも、窓の形が全部違うでしょう。あれも、交換するとなると高いんだよ。今回工事するときに、私は窓は鉄板にしてくれって言ったんだけど、丹下事務所は許さないんだよねえ。」

そりゃあ、許さないだろうなあ。でも、確かにこの構造、苦労しそう。国の維持費も出るけど、やりくりするのは本当に大変のようです。

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そもそも、この構造、どうなっているのか、と。言葉で説明されても、なっかなかわからないんですよねえ。苦労しました。

せっかくですから、丹下サン自身の言葉で説明してもらいましょう。

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20025「主体育館では、その中心軸は、ちょうど吊橋のように、2本の脚柱のあいだにケーブルが架けられ(図の青線)、その両端のバック・ステイはデッドマンにアンカーされて安定している。この中心軸に対して左右にそれぞれ三日月形をしたスタンドがずれて配置されている。(下の平面図参照)このスタンド上端はスロープになっていて(図の赤線)、観客の主要な動線となっている。と同時にこの空中に弧を描いているスロープは、構造的には斜めに立った巨大なアーチとして作用している。屋根は中心軸の主ケーブル(青)とスタンド上端(赤)との間にかけられた数多くの枝吊り鋼(図の黄緑線)で構成されている。2本の平行な主ケーブル(青)はそれによって引っ張られて、中心軸に紡錘型のさけ目ができる。これがあとでトップライトのゾーンとして利用されることになる。一方、スタンド側にかかる引張力は、上段スタンドのスロープによって流れ、脚柱の基底部に達している。左右二つの巨大なアーチの力がこの点で均衡している。また、凹型の主ケーブルと凸アーチ型のスタンド上端にそってはられた曲面は相互に凹凸というネガティブな関係をもつダブル・カーブの曲面を構成して、安定した構造面となっている。」

なにか、言葉の限界のようなものを、感じる。

「たとえば、スタンドの視線条件、スロープの勾配、主ケーブルの下がり率、枝ケーブルを各接点で直角に押さえながら走る押さえロープ(図の緑線)のアーチ性状、これらすべての要素が力学的にまた寸法的に微妙に関連しあっており、どれひとつも単独に決定することができない。」

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道に敷いてある石は、廃線になった路面電車の線路から集めてきたのだそうです。

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道は実は建築になっていて、道の真下にレストランや、練習用プール(私がうろうろしてたとこ)があります。

20025「二つの体育館がその開いた口を向かいあわせて、緊張関係を作るといった配置は、体育館の形の決定と同時に、予定されていた。しかし、それが確固とした関係づけを与えられたのは、(中略)道、道の建築、広場といった手だてを導入することを試みたときであった。その転機となったのは、付属棟と呼ばれている長い道のような建築を、二つの体育館の間に敷設したときであった。」

「そうしてこの建築の屋上は、歩行者のプロムナードとなって、原宿口と渋谷口、主体育館と付属体育館とを繋いでいる。この屋上プロムナードは普通の道プロムナードと繋がり、あるいは立体的に交錯して、変化に富んだ《道空間》を作っている。その道が、立ち止まってところどころ広場になっている」

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そして、今、渋谷口には、渋谷AXというみかんぐみが建てたライブハウスが建っています。

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世間話ではなしこんでしまい、代々木競技場をでたら日も落ちていました。せっかくなので2月にオープンした表参道ヒルズによって、帰り。

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このスロープは、すごいですね。
安藤サンへのインタビュー「各フロアは緩やかな勾配の表参道から連続するスロープで構成され、表参道に奥行きと広がりを持ったもう一つの街路を作り出す」とか言ってますが、このスロープは外と同じ約三度だそうで。

でも、建築関係なく、商業ビルとしての魅力はどうなのかとおもわなくもないです。はやり続けるかなあ…?98店舗あると言われても、パッと見、D&Gくらいしか知らなかったよ。(←私が知らないだけかも。)

同潤館(同潤会アパートを再現した部分)にはギャラリーとメガネ屋さんが入っていて、母親にメガネチェーンを買って帰りました。

そういえば、カラオケのJOY SOUNDでドリカムの「晴れたらいいね」を歌うと、ビデオに昔の同潤会アパートが映っています。

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